バス停の白い女

禍話~第1夜より~

大分県のとあるバス停のお話。
そのバス停には19時以降バスが停まらないというのだ。

え?不便じゃん。何で?苦情出ないの?と思われるだろう。
だが不可思議な事に近隣住民は皆停まらなくて良いと公認しており、バス会社も意図的に停まらない様にしているのだそうだ。

更にバス停近くの住民は、19時以降はそのバス停では降りず、1つ前のバス停で降りて、わざわざ30分程歩いて家に帰っている。

というのも、そのバス停には19時になると白いワンピースを着た女が現れるからだという。
その女は雨でも晴れでも曇りでも雪でも、とにかくいつでも日傘をさしていて、夜から朝まで道路の方を見ながら一切動かず突っ立っている。
首から上は日傘ですっぽりと隠れていて顔が見れない不気味な女だ。

女は何の前触れもなく、ある日突然、気づいたらバス停に居たらしい。
はじめてその女に気付いたのは、ジョギングが趣味の町内会長だった。
毎夜バス停そばをジョギングしていると日傘の女が必ず立っている。
女がバス停で待っているので、バスは当然止まるが、女は一切動かず乗ろうとしない。
障がいがある方なのかなと思ったそうだ。

ある日、町内会長があの可哀相な人を家に帰してあげよう、と皆に提案した。
集まった有志達とバス停に行き、町内会長は女の所へ、他のメンバーは少し離れた所から見守っていた。

町内会長が「何かお困りですか?」と女に話しかけたが、女は微動だにしない。
返事が無いので目を合わせようと、日傘の中を覗き込んだ。
その瞬間、青ざめた顔で踵を返して帰ってきた。

皆がどうしたんですか?と聞くと、
「いや、あれはダメだ。皆近づくな。」
と心底怯えた表情で言った。

その場を離れ、少し落ち着きを取り戻した町内会長が話した。
「ゆっくり近づくと、女のさしている日傘が細かく揺れていたことに気づいたんだ。
 散歩やジョギング中の人は自分が動いているし、バスの運転手や乗客は車体が振動しているので分からなかったんだと思う。
 あれ、泣いてるのか?やっぱり心に問題を抱えてる方なのだろうか?と思った。
 でも日傘の中を覗き込んだ時、自分の勘違いに気づいたんだ。

 あの女、笑ってたんだよ。
 クククッ…クククク…クックククク…

 ってな。
 あれは警察とか、そういう所に相談して対処してもらおう。」
と、動揺しながらもそうまとめ、皆は賛同した。

翌日の夜、町内会長が行方不明になった。

夫がいつもの時刻になっても帰ってこないと、町内会長の妻が皆に伝えた。
田舎だし、酔っぱらって用水路にでも落ちていたら大変だ、と近所の人総出で探し回った。
行きつけの飲み屋にもいないし、電話をしても出ない。

夜も深くなった頃、一人の若者が「町内会長を見つけた」と戻ってきた。
しかし嬉しそうな様子はなく、重苦しい表情だった。
若者はバス停の女がどうしても気になって、バス停に行ってみたそうだ。
もしかしたら町内会長はまた説得に行ったのかもしれないと。

予想通り町内会長はバス停にいた。
女と肩を密着させ、日傘の中に。

連れて帰ってこいと年配の者が言ったが、若者はぶんぶんと首を横に振った。

「俺、近づいて話しかけたんです。皆探してます、帰りましょうって。
 そしたらあの2人、同じ表情で同じ笑い方してるんです。
 クククク…って。
 これ以上何も出来ません。無理です…。」

翌朝、町内会長は何事もなかったかのように家に帰ってきた。
起きてから昨夜のことを聞いても全く記憶に無いようだった。

その事件以来、例のバス停に近づくものは誰もおらず、バスも停まらない。

著作権フリーの怖い話をするツイキャス、「禍話」シリーズの過去放送話を編集・再構成しています。

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